他人事ではない認知症と生前にできる相続対策の重要性を解説!
- vfsonoda
- 2021年4月26日
- 読了時間: 6分

相続についてのトラブルは、家族間の揉め事や相続税の節税など、相続が起こってから発生するものだけではありません。生前に財産を所有している家族が認知症となってしまった場合、財産分与の手続きが進まず困ってしまうケースが急増しています。
ここでは、家族が認知症となってしまった場合に想定される問題や、相続問題を回避するためにできる対策などについてわかりやすく解説しています。
親族が認知症になると難しくなる相続対策とは
将来的に相続が起こると予想される家族が認知症となってしまった場合、以下のような相続対策を取ることができなくなってしまいます。
不動産の売却・契約・購入
相続対策では、莫大な現金預金の節税対策で悩む方よりも、所有している不動産の評価額が大きく、売却しなければ相続税が支払えないケースの方が一般的です。相続対策として、生前のうちに不動産の管理方法を決めようとしても、名義人が認知症となってしまうと、売却や購入、新規契約といった相続対策に必要な手続きのすべてができなくなってしまいます。
銀行の口座からの引き出し・解約
本来、生前であれば可能な銀行口座の解約や預金引き出しなども、口座名義人が認知症と診断された場合は手続きができなくなります。
たとえ相続税の課税対象となるほど大きな額でなかったとしても、葬儀や家屋の清掃、処分などに必要となる費用を動かすことができず、相続する親族にとって負担となってしまうでしょう。
遺言書の作成
生前の相続対策として一般的である遺言書についても、認知症と診断されてから作成したものは無効となってしまいます。
遺産分割に関する協議
「不動産を相続しても、手続きが面倒だから権利があっても相続したくない」「法定相続分より少ない相続でもよいから、難しいことは他の親族に任せたい」など、遺産相続では法律にもとづいた財産分与とはことなる相続を選択することも可能です。その場合、相続の権利を持っている親族全員で協議をおこない同意する必要があります。これを遺産分割協議といいますが、たとえば故人の配偶者や年の離れた年長の兄弟が認知症となってしまった場合、この協議に参加することができなくなってしまいます。
このほかにも、生命保険の解約や生前贈与、養子縁組など、相続税の節税対策として重要な手続きのほとんどが進められなくなります。
故人に限らず、相続人が認知症となってしまった場合にも同様のトラブルが想定されるため、認知症が判明する前の早い段階で相続対策を取ることが大切となるのです。
親族が認知症になる前の相続対策が難しい理由
上記のように、両親や兄弟・姉妹など、相続に関与する親族が認知症となってしまうと、相続対策や節税が難しくなることがわかります。しかし、認知症になる前に相続対策を取ろうとしても、以下のような理由で進めることが難しい場合も多いでしょう。
生前に相続対策を進めることに対する反対
相続が発生してから慌てないためにと相続対策について相談しようとしても、親族から反対されることがあります。親族同士ではストレートな意見も飛び交うため「縁起でもない」「お金が目当てなのか」といった誤解に繋がるケースも多く、「自分の目の黒いうちは自分で決める」と頑なな態度になってしまう親族もいるでしょう。
相続対策について話を進めたいのに反対に遭い、認知症や亡くなってしまった後ではできない手続きもあるとなると、相続について真剣に考えている親族だけが心を痛めることとなってしまいます。
相続対策を進めている途中で認知症が判明してしまう
生前に遺産分割の方法について考えることに対して親族の同意が得られたとしても、協議を進める途中で認知症が判明してしまうケースもあります。
特に遠方に住んでいたり、長年連絡を取っていない親族がいたりする場合には、既に成年後見人として司法書士や弁護士がついている場合も多く、法定相続分とはことなる遺産分割協議が複雑となる可能性もあるでしょう。
財産を所有している当人が認知症となった場合も、成年後見制度を利用すれば遺産分割協議を進めることができます。口座の解約や不動産の処分といった手続きについても、成年後見人を立てれば代理で手続きをおこなうことが可能です。しかし、認知症の状態が長期間続く場合には、その間ずっと成年後見人である専門家に対して報酬を支払わなければならなくなるでしょう。
こうした問題を解決し、早い段階で円満に相続対策を進めるには、どのような方法があるのでしょうか。以下でさらに詳しく見ていきましょう。
親族が元気なうちに円滑に相続対策を進める方法
相続する側と財産を所有している側の親族が元気なうちに、少しでも早く相続対策を取るためには、以下のような方法を取るとよいでしょう。
相続対策について親族から反対されそうな場合の対策
親族間では相続についてある程度融通の利く話し合いができるメリットがある一方で、ひとたび感情的になると揉めやすいデメリットもあります。1人のわがままのために話がまったく進まない、というケースも多く、こうなると逆に親族間でむやみに話し合わない方がよいでしょう。
相続や節税対策について明るい税理士などの専門家を通すことで、感情的にならずに遺産分割協議を進めることが可能となります。生前の相続対策として近年人気のある家族信託についても、取り扱い実績を多く持つ税理士事務所へ相談してみるとよいでしょう。
協議の途中で認知症が判明した場合の対策
久しく連絡を取っていなかった親族の認知症が判明し、既に成年後見人として専門家がついている場合も、法律の素人である親族が直接対峙するより、こちらも専門家を立てて話し合う方が円滑に手続きを進めることができます。
特に相手側の代理人が司法書士や弁護士である場合、税金に関する対策よりも、法定相続分を守ることを重視しがちです。
ケースバイケースではありますが、節税対策をしっかりと取りつつ、法令も遵守しながら家族にとってもっとも良い形を協議するなら、代理人との交渉には税金の専門家である税理士事務所を通すとよいでしょう。
生前の相続対策に便利な「家族信託」とは?
親族が認知症になる前に相続対策がすべて取れればよいですが、もし認知症となった場合でも、円滑に相続対策が取れる制度に「家族信託」があります。
家族信託とは
家族信託とは、不動産や預金などを所有している親族の財産について、家族に託すことができる制度です。家族信託では、贈与や処分、売却といった本格的な決定は相続が発生するまでおこなわず、万一の時にそなえて財産を管理する権利を託す親族をあらかじめ決めておくことができます。
相続が発生する前に当人が認知症となった場合でも、家族信託制度を利用すれば、託された親族が本人に代わって手続きをおこなうことが可能となります。
実際に分割するのではなく、管理する権限を託すだけなので、法定相続分について将来的に考え方や状況が変わった場合でも柔軟に対応することが可能です。継続して専門家へ支払う報酬なども発生しないため、早い段階で利用できる点もメリットとなるでしょう。
熊本家族信託・認知症相談室では、遺産分割協議や認知症対策、家族信託に関する相談も随時受け付けております。毎月3件に絞って無料相談も実施しているため、あらゆるケースに応じて丁寧なアドバイスを受けることが可能です。
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