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家族信託で受託者へ報酬を払うことは可能?報酬の考え方や仕組みを解説

更新日:2020年3月8日



家族信託を進めるにあたり、受託者となる家族へ報酬を支払うことはできるのか、という点が疑問となる場合があります。財産を委託された受託者は、相続の時と同様に、書類作成や手続きなど、さまざまな手間と労力を負担することになるため、報酬を検討するケースも多いことでしょう。

ここでは、家族信託で受託者が報酬を得るための方法や報酬の考え方などについて解説していきます。家族信託の仕組みについてもご紹介していますので、相続の新しい手段である家族信託を理解するうえでお役立てください。


家族信託の概要

まずは、家族信託の概要について大まかに確認しておきましょう。


家族信託とは

家族信託とは、不動産や現預金などの財産管理を家族へ委託する方法で、財産について生前のうちに選択できる新しい相続の手段として、家族信託を検討する人が増えてきています。

本来、相続手続きは財産の所有者が故人となり、相続が発生してから行うものですが、故人の生前の意向を反映させる手段として「遺言」や「生前贈与」といった方法があります。

しかし、遺言で指定した内容を生前に反映させることはできませんし、不動産などを生前贈与した場合は、税金なども考慮しなければなりません。

家族信託はこうした悩みを解決できる方法であり、それ以外にもさまざまなメリットがあるため、近年注目されているのです。


家族信託の仕組み

通常、信託は「委託者」「受託者」「受益者」の3つで構成され、それぞれの役割は以下のようになります。

「委託者」:財産を所有し、家族へ委託する人

「受託者」:委託者から財産の管理を委託される人

「受益者」:委託者の財産から得られる利益を受け取る権利を持つ人


投資や運用の目的で財産を信託する際には、受託者を信託銀行や運用会社として財産を預けることとなりますが、家族信託の場合は受託者が「家族」となります。

通常の信託で信託銀行や資産運用会社が受託者となった場合は、信託契約の中で受託者に対して報酬が設定されます。この報酬を家族信託でどのように扱うか、という点について、以下でさらに見ていきましょう。


家族信託で受託者へ報酬を支払うことはできるのか

結論からいえば、家族信託であっても受託者へ報酬を設定することは可能です。ただし、家族信託における受託者はビジネスとして財産を受託するのではなく、信頼できる家族として託された財産を管理することになるため、報酬を設定する際には以下のような方法を検討する必要があります。


対価として報酬を支払う

上記の通り、家族信託では家族が受託者として、委託者の財産を管理します。これはあくまでも家族の財産を信託されているのであり、ビジネスとして信託業務を行うわけではありません。

そのため、信託銀行や資産運用業者の設定する報酬と、家族信託で家族が受け取る報酬は性質のことなるものとして考える必要があります。

家族信託の受託者は仕事として信託業務の報酬を得ることはできませんが、委託者から渡された財産に関する手続きや書面作成といった手間や労力を負担することに変わりはないため、その対価として報酬を得る、と理解するとよいでしょう。

これらのことをふまえて、家族信託の契約書で受託者の報酬を設定することは可能です。


家族信託における受託者の報酬の相場について

家族信託において、信託業務の対価として受託者となる家族へ報酬を設定する場合、どの程度の額が相場となるのでしょうか。

基本的には、家族信託で設定する報酬額には特に決まりはありませんが、あまりにも多額な報酬を設定した場合には、税務上認められないケースもあります。

報酬を決める目安として、成年後見人の報酬や不動産の管理報酬などが目安となりえます。ケースにもよりますが、おおむね月額3~5万円程度を相場と考えるとよいでしょう。


信託契約で報酬を設定する際の注意点

家族信託で財産を信託される家族は、個人はもちろん法人や非営利団体として受託することも可能です。ただし、法人として受託人になる場合、その法人の営業内容によっては「信託業」として受託者となっているとみなされる可能性があるため注意が必要です。



家族信託の受託者がやるべきこととは

受託者となる家族に信託業務の対価として報酬を設定することは先に説明した通りですが、対価となる主な信託業務には、どのようなものがあるのでしょうか。以下にピックアップしてご紹介します。


善管注意義務

善管注意義務とは、善良なる管理者がとるべき注意義務のことで、信託された財産については放置することなく、注意して管理する義務があることが法律で定められています。

具体的にどの程度注意して管理するべきかについて明確な定めはありませんが、社会通念上考えられる適切な管理をする義務が受託者にはある、と理解しましょう。


不動産の支払い管理

信託財産の中に不動産が含まれる場合には、水道光熱費や固定資産税など、支払うべき費用を委託者から信託された現預金の中から支払います。また現金で支払った際には必ず領収書を受け取り、保管するようにしましょう。何のために支出したのかを明らかにしておく必要があるためです。


不動産のメンテナンス

委託者が認知症となって病院や施設へ入所した場合、空き家となった自宅を信託されていれば、これを適切に管理する必要があります。庭の手入れや換気、故障やダメージがあれば必要に応じてリフォームの手配をする、といった内容が挙げられます。


不動産を売却する際の手続き全般

不動産を売却する場合には、委託者に代わり売り主として、買い主や不動産会社、不動産仲介業者などと交渉や対応を行うことになります。


記録義務

受託者には、信託後に発生した支払いや管理、メンテナンスなどについて、帳面や帳簿、日誌などで記録を残す義務もあります。業務日誌のような定型のフォームを使い、領収書などとまとめて記録をつけて管理するとよいでしょう。



家族信託を専門家へ依頼することのメリットについて

最後に、家族信託を専門家へ依頼するメリットについてもご紹介します。


柔軟な設定が可能な家族信託は専門家の力が必要

家族信託は自分で契約書を作成することもできますが、受託者を何代先までも指定できたり、委託者を受益者として、生活費を受け取るようにできたりなど、細かく柔軟な契約設定が可能です。

しかし、そのためには多岐にわたる専門的な知識が必要となるため、専門家へ依頼することをおすすめします。受託者の報酬や税務上の疑問についても、家族信託に実績のある税理士事務所などを利用することで、適切な契約を作成することができます


信託発生後の手続きや相続の相談にも乗ってもらえる

また、家族信託を依頼できる税理士と信頼関係ができていれば、その後に起こる手続きや相続についてもサポートが受けられます。「遺言と家族信託」「生前贈与と家族信託」のように複数の手続きを併用したい場合や、受益者や受託者を複数人設定する場合の協議でも、専門家を入れて話し合った方がスムーズです。


家族信託では、受託者となった家族に対して報酬を設定することもできますが、その額や「信託業」としての報酬でないかなど、いくつかのポイントに注意する必要があります。

信託発生後に生じる事務作業なども意外と多いため、将来的に発生する相続や遺言、生前贈与との併用など、専門家へ相談した方が早いですし、適切な手段が効率よく見つけられるでしょう。